派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定の準備はお済みですか?

◎「労使協定のイメージ」最新版が公表されています

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和5年度適用)」、いわゆる一般賃金が公表されたのが昨年(令和4年)8月。その約5か月後の今年1月末には、労使協定イメージの最新版が公表されました。そして、いよいよ令和5年度のスタートが迫ってきました。

少しおさらいをしますと、令和2年4月1日から施行された改正労働者派遣法により、派遣労働者にも「同一労働同一賃金」により不合理な待遇差の是正が求められることとなりました。

 

そして、この派遣労働者の同一労働同一賃金に関しては、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかの方式により派遣労働者の待遇を確保することが義務付けられています。2つの方式のうち、後者の「労使協定方式」によった場合、使用者と労働者過半数代表者等とが締結した「労使協定」によりその待遇が決定されますが、その「労使協定」のイメージが厚生労働省のホームページで公表されており、最新版が今年1月に公表されました。

労使協定イメージの最新版はここのところ、毎年12月から2月の公表となっていますが、以前のコラムで取り上げた「過半数代表者の選任」に続く、季節の風物詩(少し大げさかもしれませんが)となってきた感があります。できれば、公表された時期あたりから準備を始められるのが理想的ですが、今からでも間に合いますので、すぐにでも着手して頂ければと思います。

 

◎労使協定の起算日は、4月1日に

ところで、「労使協定」といえば「時間外・休日労働に関する協定届」、いわゆる36協定が頭に浮かびますが、こちらの起算日は任意で様々に決定できます。しかしながら、派遣法第30条の41項の規定に基づく労使協定は、新規で許可を受けたケースを除いて、起算日を毎年41日に設定します。これは、毎年夏から秋頃に公表される一般賃金の適用時期が毎年4月1日であるため、派遣法第30条の41項の規定に基づく労使協定の起算日も4月1日に合わせる形となります。「36協定」と混同しがちですので注意が必要です。

有効期間については、1年間としているケースが圧倒的に多いですが、実は法的には明確な規定はありません。「もっと長く設定しておけば、毎年締結する手間が省けるのでは?」と考えたいところですが、厚生労働省発行「労働者派遣事業関係業務取扱要領」に「目安として2年以内とすることが望ましい」と記載されていますので、最長でも2年とするのが良いと考えます。

 

もし現在有効な労使協定の有効期間が2年で、今年がその1年目であった場合、原則今回は再締結不要となります。ただしご注意頂きたいことがあります。それは、有効期間中であっても、その労使協定に定める派遣労働者の賃金が、令和5年度適用の一般賃金の額と同等以上であるかの確認は必要だということです。

そして確認の結果、同等以上でなかった場合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定の再締結が必要となります。結果的に再締結となるケースも多くあり、初めから有効期間は1年としていることが多いように見受けられます。

 

一方、確認の結果、同等以上の額であった場合には、そのことを確認した旨の書面を労使協定書に添付するルールになっています。

この書面も、厚生労働省ホームページにて「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書」のイメージとして公表されていますので、ご活用ください。

ちなみに労働者派遣事業許可を取得した初年度については、起算日は許可を受けた日、またはそれ以降の日になるかと思いますが、有効期間の終期は3月31日とすることをお勧めします

例えば8月1日付で許可を受けて労働者派遣事業を開始するにあたり、労使協定を締結するとします。この時の起算日は8月1日、有効期間1年として期限を7月31日としてしまうと、一般賃金の適用日とズレが生じてしまいます。この点は先程も触れた起算日の考え方と同じ理由です。

 

この場合は、少し有効期間が短くなりますが一旦翌年の3月31日までを期限として締結し、その後新たに4月1日起算日の労使協定を締結する。または逆に有効期間を少し長めに設定して、翌々年3月31日までにされたほうがよろしいかと思います。

年度をまたいで有効期間を設定した場合は、最新の一般賃金との確認が必要であること。確認の結果、下回っていた場合に再締結が必要なことは前述同様です。

 

◎労使協定は最新版「労使協定のイメージ」に準拠して作成することが望ましい

昨年(令和4年2月)公表版の労使協定のイメージに準拠して令和5年分を作成したとしても、内容が適切であれば、そのことのみによって労働局から是正指導を受けることはないものと思われます。

ただ、労働局の見解は最新版に準拠して作成されるのが「望ましい」という回答が多くあったものの、各労働局により取扱いが分かれる可能性は十分あります。もし、これから作成されるのであれば、最新版を確認して作成されることをお勧めします。またすでに、最新版の公表に気付かずに令和5年版を作成済みの場合は、4月1日を迎える前に念のため、管轄労働局に確認をされたほうが良いかもしれません。

 

以下、今回公表版の労使協定イメージで変更されている点を簡単にみていきたいと思います。まずは以下に、URLを貼付いたしますので、ご確認頂ければ幸いです。

なお、今回新たに作成されるのであれば、旧イメージを確認する必要は全くありませんので、最新版のみを参考に作成して頂ければ問題ありません。

 

労使協定のイメージ(令和5年1月31日公表版)

https://www.mhlw.go.jp/content/001046217.pdf

※参考 労使協定のイメージ(令和4年2月2日公表.32日更新版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000905037.pdf

 

実は、内容においては大きく異なる点はありません。最新版イメージで大きく異なるのは、条文構成と、通勤手当・退職手当の支払方法の違いによる条文例と別表の細分化です。

まず条文構成ですが、前回版では全13条であったところ、最新版では全9条になりました。

 

前回版では、第3条(賃金の決定方法)において、次のようになっていました。

 

 

(賃金の決定方法)※前回版
第3条

(一)~(二) (略)

(三)時間外労働手当、深夜・休日労働手当については、基本給、賞与及び手当とは分離し、第5条のとおりとする。

(四)通勤手当については、基本給、賞与及び手当とは分離し実費支給とし、第6条のと

おりとする。

(五)退職手当については、基本給、賞与及び手当とは分離し、第7条のとおりとする。

 

このように、各号「第〇条のとおりとする」とし、改めて各条文に詳細を定めていました。しかし最新版では第3条において詳細まで全て記載する形になっております。

 

(賃金の決定方法)※最新版
第3条

(一)~(二) (略)

(三)時間外労働手当、深夜・休日労働手当については、基本給、賞与及び手当とは分離

し、社員就業規則第○条に準じて、法律の定めに従って支給する。

(四)通勤手当については、基本給、賞与及び手当とは分離し、対象従業員の通勤手当の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、通勤に要する実費に相当する額とする。

(以下 略)

 

 

前回版の第5条、第6条、第7条の内容が第3条に組み込まれ、また前回版第8条も同様に第4条に組み込まれる形で再編成されたため、条文数が減少しました。全体の流れが分かりやすくなり、すっきりしたように感じます(個人の感想ですが)。

令和4年度分をもとに、最新イメージに準拠した令和5年度適用労使協定を作成する際に、参考にして頂ければと思います。

 

また最新イメージでは、別表の記載例のバリエーションが増えました。例えば退職手当を前払いにて支給するか、合算して比較するかの場合、前回版では別表記載例はひとつしかありませんでした。しかし最新版では、「退職金前払いの方法をとる場合」、「退職手当を合算する場合」など記載例が豊富に用意されました。より適切な別表の作成が可能になったのではないでしょうか。

派遣法第30条の41項の規定に基づく労使協定は、毎年6月に提出する労働者派遣事業報告書に添付することになっていますので、「それまでに用意すればいい」と言われることがありますが間違いです。あまり時間はありませんが、しっかり準備をして頂き新年度をお迎えください。

 

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