○労働者派遣事業報告書の提出 ―令和7年度版―

すでに梅雨入りした地域もありますが、季節の移り変わりとともに今年もやってまいりました。「労働者派遣事業報告書」の提出期間です。

労働者派遣事業主の皆様にとって、大変重要な事業報告であり、毎年作成にご苦労されている事業主様も多いと聞いておりますので、本年も改めてポイントを絞って取り上げていきたいと思います。

 

 

1.事業報告書とは

労働者派遣事業主が提出しなければならない「事業報告書」には、次の3種類があります。

 

①労働者派遣事業報告書(様式第11号)
②労働者派遣事業収支決算書(様式第12号)
③関係派遣先派遣割合報告書(様式第12-2

 

毎年6月に提出期間を迎える事業報告書が、今回のコラムのテーマである①労働者派遣事業報告書です。これは、労働者派遣事業を営む事業者が、派遣労働者の雇用状況、労働環境・待遇、派遣事業の運営状況などを毎年報告する義務のある書類です。

なお、この様式第11号は、令和6年度報告分から様式が変更されています。旧様式では受理がされませんので、必ず労働局等のホームページから最新版をダウンロードしてお使いください。

 

一方、②と③は労働者派遣事業主の資産の状況や収支、親会社等の関係派遣先への派遣割合等を報告するもので、提出期間はどちらも派遣元事業主の決算月経過後3か月以内です。各事業主の決算月により提出期間が異なるので注意が必要です。

 

 

2.提出期間

労働者派遣事業報告書(様式第11号)は、第1面のあとに続く「年度報告」(第2面から第6面)と「6月1日現在の状況報告」(同様式第7面から第9面)の2部構成になっており、令和7年度は次の期間に提出しなければなりません。

 

提出期間:令和7年6月2日(月)~令和7年6月30日(月)
(※郵送で提出する場合は、6月30日必着です。)

 

原則として、毎年6月1日から6月30日が提出期間ですが、暦の関係で本年は上記の期間となります。ちなみに、同じ理由で「6月1日現在の状況報告」も報告対象日が6月1日ではなく、6月2日になっているので注意が必要です。

※様式には「6月1日現在の状況報告」となっていますが、実際に記入する数値や人数等は「6月2日」現在のものを記入します。

 

なお、決算月が3月末日の場合は、労働者派遣事業収支決算書(様式第12号)と関係派遣先派遣割合報告書(様式第12-2)の提出期間の末日も同じ6月30日となりますので、同時に提出しても問題ありません。

 

 

3.年度報告の報告対象期間

原則として、直前に終了した事業年度(決算期)が報告対象期間となります。

事業年度が、各月末日にて終了する場合は、次の早見表にてご確認下さい。

 

 

 

報告対象期間は、第1面の8「事業年度の開始の日及び当該事業年度の終了の日」欄に記載します。

 

なお、労働者派遣事業の許可を取得後、初めての決算が終了していない場合は、今回の報告書において報告対象期間は存在しませんので、この欄は記入する必要はありません。また、年度報告第2面から第6面の記載も不要となります。このケースに関しては、「5.よくあるご質問」でも取り上げていますので、詳しくはそちらをご覧ください。

 

 

4.提出部数と添付資料

提出部数は、正本1通と写し2通の合計3通です。

添付資料は、状況に応じて次のとおりとなります。

 

①労使協定書の写し 2通

労使協定方式を採用している事業主(事業所)は、令和7年6月1日時点で有効なすべての労使協定書を添付することが必要です。

労使協定を事業所毎に締結している場合は、事業所毎に2通の添付が必要です。

※例年、時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)が誤って添付されているケースが一定数いらっしゃるそうです。こちらとは異なりますのでご注意ください。

 

②社内規程等の写し 2通

労使協定書上では具体的に内容を定めずに、就業規則などによることとしている場合は、労使協定で引用している就業規則や賃金規程などの該当部分の写しを添付する必要があります。

 

③同等以上であることを確認した旨の確認書および確認を行った別表(一般賃金と比較をした)の写し 2通

労使協定の有効期間中(例:令和6年4月1日から令和8年3月31日)に一般賃金の額が変更(新たな局長通達が発出)され、かつ、比較した結果、派遣労働者の賃金が一般賃金以上になっている場合には、同等以上を確認した旨の書面を添付することが必要です。

また、確認書には必ず、確認を行ったことが分かる別表を添付する必要があります。

※同等以上になっていない場合は、派遣労働者の賃金を引き上げ、労使協定を再度締結し直す必要があります。協定書の有効期間内であっても、この手続きが必要ですのでご注意ください。

 

④切手を貼付した返信用封筒

原則として郵送で提出する場合のみ必要ですが、労働局によっては窓口にて直接提出した場合でも、事業主控の返却が後日郵送にてなされるルールになっている場合があります。この場合にも返信用封筒が必要となります。詳しくは管轄労働局から送付されるご案内にて確認してください。

 

 

5.よくあるご質問

Q1 労働者派遣事業の許可を新規で取得した事業所ですが、報告書のすべての項目への記載が必要ですか?

 

A1 労働者派遣事業の許可日から、令和7年5月31日までの間に決算を迎えていない法人の場合は、年度報告(第2面~第6面)の記載は不要となり、第1面の「(年度報告)」の部分を横線で消してください。そして、この場合でも第7面~第9面(6月1日の状況報告)の記載は必要であり、第1面~第9面まで(記載不要の面も含めて)すべて提出する必要があります。

 

Q2 労働者派遣の実績がありませんが、この場合でも報告書の提出は必要ですか?

 

2 派遣実績がない場合も必ず提出が必要です。この場合の記入箇所は次のとおりとなります。

①第1面はすべて記入
②第2面(1)①(全労働者の人数)
③第2面の上部欄外に「派遣実績なし」と記入
④第5面(10)(マージン率等の情報提供の状況)
⑤第6面(11)①キャリアコンサルティングの窓口担当者の人数⑥第7面の上部欄外に「派遣実績なし」と記入

以上が、派遣実績がない場合にも記載が必要な項目ですが、各労働局がホームページ上に掲載している記載例によって、若干の相違点があります。念のため、管轄の労働局ホームページにて、ご確認をお願いいたします。

なお、第1面から第9面まで記載のない面も含めて、すべて提出する必要があります。

 

 

Q3 第3面、第4面(派遣料金、派遣労働者の賃金)の記載について、派遣が休業になり休業手当などの支払いがあった場合には、どのように計算すればよいですか?

 

A3 「派遣料金」は、『「派遣先から得た派遣料金の総額」÷「派遣労働者の総労働時間」』×8(小数点以下は四捨五入)で計算されます。

そして、この「派遣労働者の総労働時間」には、派遣労働者の「休業の時間」や「有給休暇の時間」も含めて計算する必要があります。

 

「派遣労働者の賃金」は、『「派遣労働者に支払った賃金の総額」÷「派遣労働者の総労働時間」』×8(小数点以下は四捨五入)で計算されます。

そして、この「派遣労働者に支払った賃金の総額」には、「休業手当」や「有給休暇分の賃金」を含みます。また「派遣労働者の総労働時間」は「休業の時間」や「有給休暇の時間」も含めて計算してください。

 

Q4 第5面(10)「マージン率等の情報提供の状況」を記載する欄について、該当するような情報提供を行っていません。この場合、「実施していない」と記載しても問題ありませんか?

 

A4 マージン率等の情報提供は、派遣元事業主の義務として派遣法第23条第5項で規定されているものです。そのため、「実施していない」場合は、派遣法違反となり労働局の指導対象となります。

また令和3年4月1日からは、派遣元事業主による情報提供の法的義務がある全ての情報の提供方法について、「常時インターネットの利用により、広く関係者、とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること」と指針で定められました。

具体的には、自社のホームページに掲載するか、または人材サービス総合サイトに掲載するかの対応が必要となっています。

 

以上、労働者派遣事業報告書について、ポイントを絞って取り上げました。各労働局のホームページには、詳細な記載例が掲載されています(一部労働局を除く)ので、そちらをご参考に期間内の提出をお願いいたします。

 

 

 

 

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