労働者派遣事業の許可を受けるべき事業所、受けることができない事業所

労働者派遣事業を行うためには、労働者派遣事業を行う派遣元事業所において許可を取得する必要があります。

「当たり前じゃないか!」と思われるかもしれません。

確かに支店、支社、営業所など名称はともかく、そのような本店(本社)とはべつの場所が存在しない会社などの場合は、労働者派遣事業も本店事業所で行いますので、許可もその事業所で取得します。

 

しかし、本店とは別に事業所などを設けている場合は、その本店とは別の事業所で許可を受けることも可能ですし、状況によっては受ける必要がある場合があります。

例えば、本社が東京、支店が大阪にある会社で考えてみます。

今後見込まれる派遣先が関西地方にあり、派遣に関する業務を大阪支店でも行おうとする場合、その関わり方の度合いにより、大阪支店において許可を取得しなければならない可能性があります。

以下、詳しく説明させて頂きます。

 

○事業所とは

まず「事業所」の考え方について整理したいと思います。

「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(厚生労働省令和54月版)によると、「事業所」とは、労働者の勤務する場所または施設のうち、事業活動が行われる場所のことであり、相当の独立性を有するものであるとされています。

具体的には、雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的には同じで、次の要件に該当するか否かを諸々考え合わせて判断されます。

 

①場所的に他の(主たる)事業所から独立していること。

②経営(または業務)の単位としてある程度の独立性を有すること。つまり、人事、経理、経営(または業務)上の指導監督、労働の態様などにおいてある程度の独立性を有すること。

③一定期間継続して、施設としての持続性を有すること。

 

労働者の勤務する場所または施設が、上記①から③の全てに該当する場合、及び事業主が法人である場合であって、その登記簿上の本店または支店に該当するときは、言うまでもなく一つの事業所として取り扱います。しかしそれ以外の場合であっても、他の社会保険の取扱い等によっては、一つの事業所と認められる場合があるので、実態を把握の上、慎重に事業所か否かの判断を行うものとされています。

 

○労働者派遣事業を行う派遣元事業所の判断

労働者派遣事業の許可を取得する必要があるのは、「事業所」のうち「労働者派遣事業を行う派遣元事業所」となりますが、次の基準により判断されます。

 

〈判断基準〉

実質的に労働者派遣事業の内容となる業務処理の一部または全部を行っている事業所であること。

 

派遣労働者に対して派遣就業の指示を行い、労働に従事させていると評価できる事業所のことをいいます。

具体的には派遣法第34条の就業条件の明示、派遣労働者に係る労働契約の締結、派遣労働者になろうとする者の登録、派遣労働者の雇用管理といった事務処理の機能を有している事業所、言うなれば派遣労働者が帰属する事業所のことです。

場所的に他の(主たる)事業所から独立している事業所、特に異なった都道府県に所在する事業所については、このように判断される蓋然性が極めて高いと言えます。

法人である場合の登記簿上の本店、または支店であっても判断基準は同じです。

 

なお、次の業務のみを行っている事業所は、労働者派遣に関する業務を含んでいても、労働者派遣事業を行う事業所ではないと判断されます。

 

(1)派遣労働者の教育訓練のみを行う事業所

(2)派遣労働者の募集のみを行う事業所

(3)派遣先の開拓のみを行う事業所

(4)労働者派遣事業に係る会計、財務の処理のみを行っている事業所

 

※注意点

判断基準の具体例に記載した中の「派遣労働者になろうとする者の登録」について、その登録申込みに対して、真に偶発的にこれを受理するに過ぎない場合は、許可を受ける必要はありません。

しかし、上記(1)から(4)のような業務を行う事業所については、その事業内容からも、登録申込みの受理を行う場合には、業として労働者派遣(の一部)を行っていると解される蓋然性が高いので、許可を受けることが「適当である」とされています。

さらに、その登録申込みの受理が繰り返し行われているような場合には、業として労働者派遣事業(の一部)を行っていると解されるので、許可を受けることが必要です。

 

 

以上の判断基準により「労働者派遣事業を行う派遣元事業所」であると判断されると、すでに本社など他の事業所で許可を受けていたとしても、追加で許可(正確には事業所新設の変更届)を受ける必要があります。

 

ただし、労働者派遣事業を行う事業所と判断された事業所であっても、現実の雇用保険の取扱いにおいて、「事業所非該当施設」とされている場合、労働者派遣事業の許可を受けることができません。この点を次の項目で見ていきたいと思います。

 

○「雇用保険事業所非該当」の承認

労働者を1人でも雇うと、その業種や事業規模にかかわらず、雇用保険の適用事業となります(農林水産業の一部を除きます)。

そして、その適用の単位は経営組織として独立性を持った「事業所単位」で適用されます。

 

支店や営業所、工場などでも人事、経理、経営管理などの面で、ある程度独立して業務を行っていれば個々に手続きを行います。

 

このように雇用保険に関する事務処理は、原則は事業所ごとに行うことになっていますが、労働者が役務を提供する場所または施設(支店、営業所、出張所等)が、次の要件にすべて該当し、独立した事務所と認められないときは、ハローワークに申請し「雇用保険事業所非該当」の承認を受けることにより、直近上位の主たる事業所(本社等)で、一括して雇用保険関係の事務手続きを行えるようになります。

 

〈事業所非該当承認基準〉

①人事、経理、経営(又は業務)上の指揮監督、賃金の計算、支払等に独立性がないこと

②健康保険、労災保険等他の社会保険についても主たる事業所で一括処理されていること

③労働者名簿、賃金台帳等が主たる事業所に備え付けられていること

 

以上のように主たる事業所(本社等)以外の事業所(支店、営業所など)では、非該当施設の承認を受けていることが多くあります。

 

前半部分でみてきたとおり、労働者派遣事業を行う事業所と判断された事業所は、派遣労働者との雇用契約の締結や雇用管理、就業指示など独立して業務を行う事業所です。

にもかかわらず、雇用保険の事務に関しては「非該当」です、というのでは矛盾が生じることになります。

そのような理由から、「事業所非該当施設」とされている事業所では、労働者派遣事業の許可を受けられないという結論になっています。

 

主たる事業所以外で許可取得を考えられている場合、または実際に労働者派遣に関する業務を行っており、労働者派遣事業を行う事業所との判断を受ける可能性があるため事業所新設の変更届を出す必要はある場合は、その事業所が雇用保険の非該当施設になっていないかをご確認ください。

「非該当施設」とされている場合は、「事業所」に関する判断に矛盾が生じないように整理する必要がありますので、管轄の労働局にもご相談頂き、ご対応頂ければ幸いです。

 

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