労働者派遣・職業紹介事業許可申請と登記事項証明書

登記事項証明書。かつては「登記簿謄本」と言っていましたので、こちらの方がお馴染みかもしれません。多くの許認可申請の場面で添付や提出を求められる書類ですが、労働者派遣事業、職業紹介事業の許可申請においても添付書類のひとつとなっています。

しかし、その記載内容により思わぬ落とし穴にはまることもありますので、今回のコラムでは登記事項証明書を取り上げてみたいと思います。

 

(1)登記事項証明書と登記簿謄本

官公庁の窓口等で、「登記事項証明書を提出してください」と言われて、「登記簿謄本なら分かるけど、登記事項証明書とは何だろう?」そう思われたことはないでしょうか。

 

または、「登記簿謄本を取って来て下さい」と言われて取りに行ったが、「証明書しか出ません」そう言われてしまったことはないでしょうか。

 

実はこの2つ、名称が異なるだけで、どちらも証明内容は同じものです。

登記事務をコンピュータで処理している登記所では、登記事項は磁気ディスクに記録されており、その内容を用紙に印刷し証明したものが登記事項証明書となります。

一方、登記事務をコンピュータで処理していない登記所では、登記事項を直接登記用紙に記載しており、その用紙を複写し、証明したものが登記簿謄本です。

現在は、ほぼすべての法務局でオンライン化が完了し、コンピューター処理されていると思われますので、取得できる書類は登記事項証明書のみとなります。

 

(2)履歴事項全部証明書

各労働局ホームページに掲載されている「労働者派遣事業許可申請提出書類一覧」等には、添付書類として、「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」と記載されています。

そもそも、登記事項証明書には様々な種類があり、主なものは次のとおりです。

 

①現在事項全部証明書

現在効力のある登記事項が全て記載されている書類です。一部が記載された、現在事項一部証明書もあります。

 

②履歴事項全部証明書

現在効力のある登記事項に加えて、交付請求をした日の3年前に属する日の1月1日以降に抹消・変更された登記記録が記載された書類です。一部が記載された、履歴事項一部証明書もあります。

 

③閉鎖事項全部証明書

交付請求をした日の3年前の属する年の1月1日よりも前に抹消された事項等を記載した書類です。一部を記載した、閉鎖事項一部証明書もあります。

 

④代表者事項証明書

会社等の代表者に関する情報が記載された書類です。

 

以上のような種類がありますが、労働者派遣事業・職業紹介事業の許可申請の際には、②履歴事項全部証明書を取得し、申請書に添付します。種類を間違えないように、交付請求をしてください。

 

交付請求は、各法務局の窓口、郵送請求によるほか、オンラインによる請求も可能です。

 

 

法務局ホームページ 各種証明書請求手続

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00002.html

 

(3)登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の確認ポイント

繰り返しになりますが、労働者派遣事業・職業紹介事業の許可申請の際、法人の場合、添付書類として登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を提出します。

ただし現在は、労働局が登記情報連携システムにより入手できる場合は添付を省略することが可能です。ただ、添付の省略が可能であったとしても、登記事項証明書の内容は労働局で精査されますし、申請書作成においても重要な資料となりますので、ぜひ最新の証明書を取得しておくことをお勧めします。

 

労働局ではこの登記事項証明書により、申請法人の本店住所、事業目的、役員などを確認します。以下、主なチェックポイントと指摘されがちな事項を挙げていきます。

 

①本店住所

申請書に記載する住所は、登記事項証明書の記載と少しでも相違があると修正の対象となります。例えば、登記上の住所が「○○町三丁目2番1号」となっているところ、申請書に「○○町3-2-1」と記載されていると修正対象になります。それどころか「○○町3丁目2番1号」もこのままでは受付されません。「三」の部分が、「3」になっているからです。

細かいですが、完全に同じ記載になっている必要があります。

 

②目的

労働者派遣事業の許可申請をするためには、登記事項証明書の事業目的に「労働者派遣事業」を行う旨の記載が必要です。

ところで、かつて労働者派遣事業には、届出制の「特定労働者派遣事業」と許可制の「一般労働者派遣事業」の2つの区分がありました。しかし、平成27年の改正労働者派遣法の施行により特定労働者派遣事業は廃止され、労働者派遣事業はすべて許可制に一本化されました。それにより、「特定」や「一般」の区分がなくなりましたので、名称も「労働者派遣事業」となっています。

 

ところが、現在でも事業目的に「一般労働者派遣事業」と記載されているケースがあります。この場合、平成27年の改正派遣法施行前から、すでに定められていた場合はまだ認められる可能性がありますが、施行以後に定められているケースでは認められません。

インターネット等には過去の情報も掲載されていますので、許可申請にあたって事業目的に労働者派遣事業を行う旨を追加する場合、または新規で法人を設立する場合には十分ご注意ください。

 

③役員

労働局では登記事項証明書により、申請書に記載された役員の照合、確認を行います。しかし、役員の任期満了による退任や新たな役員の就任などの登記が適切に行われていないとこの照合をすることができません。

役員の任期については登記事項ではないので、定款の記載により確認します。このときに、定款で定められた任期をすでに超えているにもかかわらず、その退任登記、就任登記または重任登記もされていない場合、そのような状態の登記事項証明書では、現在の役員を正確に把握することができないので、申請書の受付がされません。

 

役員の任期が満了した後、間を置かずに同じ人が再び役員に選任された場合、結果的に顔ぶれが同じで役員が変更していないため、役員の変更登記がされていないケースが見受けられます。このような場合でも、任期満了により退任した役員が再び就任するということになり、役員の登記事項に変更が生じていますので、役員変更の登記申請が必要です(登記上は「重任」といいます)。

 

・株式会社の取締役の任期

株式会社の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、定款や株主総会の決議によって、短縮することもできます。

また、公開会社ではない株式会社の取締役の任期は、定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することもできます。

ちなみに、公開会社とは株式会社が発行する株式の全部または一部につき、株式の譲渡について株式会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式会社のことをいいます。あくまで自由に株式を譲渡できるかどうかの観点での区別であり、市場(東京証券取引所等)に株式を公開しているかどうかは関係ありません。

 

 

今回は、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可申請の際に添付する登記事項証明書にスポットを当ててみました。3か月以内に取得した最新内容のものを添付すれば問題ないルールですが、記載内容により意外な落とし穴もありますので、事前に十分確認されることをお勧めいたします。

 

 

 

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