派遣先における特定有期雇用派遣労働者の雇い入れ努力義務

近年、様々な業種において人材不足が叫ばれるなか、労働者派遣を活用する場面もますます増加する傾向にあります。企業にとっては、柔軟な人材確保が可能になる一方で、労働者派遣をめぐっては、「派遣労働者の雇用安定」という観点から、法整備が進められてきました。

そのうちの一つに「特定有期雇用派遣労働者の雇い入れ努力義務」があります。これは、労働者派遣において派遣先が講ずべき措置等の一つですが、あまり意識的に取り組まれてはいないように感じます。

 

確かに努力義務ではありますが、制度の趣旨を理解せずに対応を怠ると、派遣労働者とのトラブルに発展したり、行政指導につながる可能性もあります。

そこで今回のコラムでは、特定有期雇用派遣労働者について基本的な考え方を整理するとともに、派遣先に課される雇い入れ努力義務の内容と、実務上のポイントについて取り上げてみたいと思います。

 

1.特定有期雇用派遣労働者とは

派遣労働者には大きく分けて「無期雇用派遣労働者」と「有期雇用派遣労働者」が存在します。

無期雇用派遣労働者は、派遣元と期間の定めのない雇用契約を結んでいる労働者であり、派遣期間に制限はありません。

これに対して、有期雇用派遣労働者は派遣元と有期労働契約を結んでいる労働者です。

「特定有期雇用派遣労働者」とは、その有期雇用派遣労働者のうち、次の要件のいずれにも該当する労働者のことをいいます。

 

①派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について、継続して1年以上の期間、派遣労働に従事する見込みがある

②派遣期間終了後も継続して就業することを希望している。

※ただし60歳以上は対象外となっています。

 

ところで、特定有期雇用派遣労働者については、以前、当サイトのコラムにおいて「派遣元事業主による雇用の安定の措置」というテーマでも取り上げました。

今回のテーマは、派遣先による雇用安定措置の一つであり、相互関係にあるので少しおさらいをしたいと思います。

「派遣元事業主による雇用安定措置」のコラムでは、有期雇用派遣労働者を就業継続期間の見込みの違いにより次のように類型しました。

 

①特定有期雇用派遣労働者(雇用安定措置の義務あり):派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について、継続して3年間派遣労働に従事する見込みがあり、その派遣期間終了後も継続して就業することを希望している者。

②特定有期雇用派遣労働者(雇用安定措置の努力義務あり):派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について、継続して1年以上の期間派遣労働に従事する見込みがあり、その派遣期間終了後も継続して就業することを希望している者。

③特定有期雇用派遣労働者等(雇用安定措置の努力義務あり):①②以外で、派遣元事業主に雇用された期間が通算して1年以上である者。派遣元事業主に雇用された期間が通算して1年以上である、今後派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者(いわゆる「登録状態」の者)。

 


派遣元においては、同一組織単位への継続就業見込みの違いにより、雇用安定措置の義務がある①と、努力義務となる②に分かれていますが、これらをまとめて特定有期雇用派遣労働者となり、雇用安定措置の内容は次のとおりとなります。

 

・派遣先への直接雇用の依頼

・派遣労働者として就業させることができるように就業の機会を確保

・派遣元事業主による派遣労働者以外の労働者としての無期雇用の機会を確保

・その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置

 

この中で、派遣労働者本人の希望により、「派遣先への直接雇用の依頼」が選択された場合、今回のコラムのテーマの場面に至る流れとなります。

 

2.特定有期雇用派遣労働者の雇い入れ努力義務の内容

派遣先は、派遣元事業主から雇用安定措置として、特定有期雇用派遣労働者への直接雇用の依頼を受けたとき、以下の①から④までの要件をすべて満たしている場合は、受け入れている特定有期雇用派遣労働者を雇い入れるよう努めなければならないとされています。(労働者派遣法第40条の4)

 

①特定有期雇用派遣労働者に該当すること

②派遣先の事業所等の組織単位ごとの同一の業務について、1年以上継続して従事していること

③引き続き、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該派遣の受入れ期間以後に労働者を雇い入れようとすること

④当該有期雇用派遣労働者について、派遣元事業主から法に定める雇用安定措置の一つとして直接雇用の依頼があったこと

 

以上の要件をすべて満たした場合、派遣先での雇い入れ努力義務が発生します。

 

 

3.派遣先に雇い入れ努力義務が課される意義とその背景

労働者派遣法では、派遣労働への固定化防止の観点から派遣労働者個人単位の期間制限を設けています。しかし、これにより派遣期間の上限等に達した派遣労働者については、派遣先を失うことにより失職するおそれがあります。

 

このため、雇用安定措置を設けていますが、派遣労働者のなかには、正社員等での直接雇用を希望しつつも、やむを得ず派遣就労に従事している人も存在しています。そこで、雇用安定措置として、派遣元事業主から直接雇用の依頼があったときは、派遣先も可能な限り雇用する等の責務を課しているものとなります。

 

4.派遣先が注意すべき実務上のポイント

実務上よく見られる誤解は「努力義務なのだから、特別な対応は不要」、「派遣元から、直接雇用の依頼はあったが放っておいても大丈夫」という考え方です。

確かに、法的強制力はないので雇い入れるのは義務ではありませんし、直接の罰則規定はありません。しかし、直接雇用の依頼に対して、放置しても良いというわけではありません。一切、何の検討も行わず派遣契約を終了させた結果、派遣労働者から不満が生じ、トラブルに発展するケースも考えられます。

 

また、実際に雇い入れを行わなかったとしても、対応した内容の記録を残しておき、行政指導の際に説明できる状態にしておくことも重要です。社内で検討した記録や、派遣元とのやり取りの内容を残しておくと良いかと思います。

 

5.まとめ

特定有期雇用派遣労働者の雇い入れ努力義務は、派遣先にとっては負担に感じられるかもしれません。確かに努力義務ではありますが、適切に対応することで、トラブルを未然に防ぎ、信頼される企業となることが期待されます。制度の意義と背景を理解し、必要に応じて専門家等の助言を受けながら対応して頂ければと思います。

 

まずはお気軽に無料相談をご利用ください

  • プロに依頼して人材派遣業許可をスムーズに取得したい方
  • 人材派遣業・業務請負業・有料職業紹介事業についてアドバイスを受けたい方
  • 開業後の労務管理やビジネスモデル構築について相談したい方

相談申込み:0120-073-608(全国対応・平日10:00~18:00)

メールでの相談申込み(24時間受付)

  • 相談時間はたっぷり1時間
  • 事前予約で時間外・土日・祝日も対応
  • 内容によって出張無料相談も可能