派遣元管理台帳の適切な作成と管理

労働者派遣事業を適正に運営するうえで、その作成と管理が法的に義務付けられている派遣元管理台帳。しかし、その書類の重要性とは裏腹に、実務の現場では非常に軽視されている状況が少なくありません。

「様式だけは準備しているが全く作成されていない」、「派遣開始時に作成したものの、契約更新後の内容が反映されていない」といったケースが具体的には見受けられます。

また、労働局による定期指導などの行政調査でも必ず調査対象になる書類ですが、その通知が来てから慌てて確認するというケースもあるようです。

そこで今回のコラムでは、派遣元管理台帳の作成と管理、その役割と実務上注意したいポイントについて整理していきたいと思います。

 

1.派遣元管理台帳とは

(1)派遣元管理台帳の概要と目的

派遣元管理台帳は、労働者派遣法第37条の定めるところに従い、派遣元事業主に作成が義務付けられている、いわゆる法定帳簿です。派遣労働者ごとに作成し、それぞれの派遣就業について、必要事項を記載します。

派遣元管理台帳を作成する目的は、派遣労働者の就業状況等の履歴を記録することで、派遣元事業主が、派遣先において派遣就業する派遣労働者の雇用主として適正な雇用管理を行うためです。

記載事項の詳細は、次の章で詳しく書きますが、業務内容や教育訓練の実施状況など多岐にわたる内容が含まれています。これらは単なる事務的な処理ではなく、派遣労働者がどのような条件で就業していたかを示す重要な資料となりますので、正確な記載が求められます。

 

(2)派遣元管理台帳の作成方法

派遣元管理台帳は、派遣元事業主の事業所ごとに作成する必要があります。

このように書きますと本章(1)の「派遣労働者ごとに作成」と矛盾するように思います。しかし、これは派遣元管理台帳の作成と保存は、労働者派遣事業の許可を受けた事業所ごとに行うことが必要で、本社などで一括して作成することはできないという意味になります。

作成と管理を事業所単位で行い、記載は派遣労働者ごとに行うことが必要です。

また、派遣労働者の雇用管理が円滑に行われるように、派遣労働者を有期雇用労働者と無期雇用労働者に分けて作成する必要もありますので注意が必要です。

なお、派遣元管理台帳は、労働者派遣の終了の日から起算して3年間の保存義務があります。

 

2.派遣元管理台帳の記載事項

(1)派遣元管理台帳の記載事項

派遣元管理台帳には、次の事項を記載します。

① 派遣労働者の氏名

② 協定対象派遣労働者であるか否かの別

③ 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別、有期雇用の場合は労働契約の期間

60歳以上の者であるか否かの別

⑤ 派遣先の氏名又は名称

⑥ 派遣先の事業所の名称

⑦ 派遣先の事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位

⑧ 派遣期間及び派遣就業をする日

⑨ 始業及び終業の時刻

⑩ 従事する業務の種類

⑪ 従事する業務に伴う責任の程度

⇒派遣労働者が従事する業務に伴って、行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等について記載します。

⑫ 苦情処理に関する事項

⑬ 紹介予定派遣に関する事項

⑭ 派遣元・派遣先責任者に関する事項

⑮ 就業日外・就業時間外労働に関する事項

⑯ 期間制限のない労働者派遣に関する事項

⑰ 社会・労働保険の被保険者資格取得届の提出の有無に関する事項

⇒「無」の場合は、その理由を具体的に付記しすることが必要です。

手続き終了後は「有」に書き換えます。

⑱ 段階的かつ体系的な教育訓練を行った日及び内容

⑲ キャリア・コンサルティングを行った日及び内容

⑳ 雇用安定措置を講ずるに当たって、派遣労働者から聴取した日及び希望する措置の内容

㉑ 雇用安定措置を実施した日、内容及びその結果

⇒派遣先に対して、直接雇用の依頼を行った場合については、派遣先の受入の可否について記載します。

 

(2)派遣元管理台帳の記載方法

派遣元管理台帳の記載は、労働者派遣をする際に行わなければなりませんが、記載事項が確定する都度、記載していくことになるので、内容によって記載する時期は異なります。

具体的には、上記(1)の⑫、⑱、⑲、⑳及び㉑を除くすべての事項は、労働者派遣をする際には、あらかじめ記載されている必要があります。

一方で、⑫、⑱、⑲、⑳及び㉑の事項については、苦情の申出を受けてその処理に当たった都度、教育訓練やキャリアコンサルティングを行った都度、雇用安定措置の希望の聴取や措置を実施した都度、記載することになります。

また、派遣先からの派遣就業の実績に関する通知を受けた場合に、その派遣就業の実績があらかじめ予定していた就業の時間等と異なるときは、通知を受けた都度、その異なった派遣就業の実績内容を記載する必要があります。

 

3.実務上ありがちな記載もれ

実務上、次のような記載もれが見受けられます。

 

(1)教育訓練の実施記録がない

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施する必要があります。

そして、この教育訓練を実施した場合は、派遣元管理台帳に実施した日時と内容を記載する必要があります。しかし、全くその記載がないケース、記載が不十分なケースが多くあります。必ず「いつ、どのような教育訓練を実施したか」を記載することが必要です。

 


なお、「人事記録」等の別紙に記載する方法でも問題ありませんが、その場合には派遣元管理台帳にその旨を記載するとともに、その別紙を派遣元管理台帳の一部として管理・保存することが必要です。

 

(2)苦情処理の記録がない

派遣労働者から苦情が寄せられた場合には、その苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況について、その都度、派遣元管理台帳に記載する必要があります。

しかし、「口頭で対応したから記録していない」とった理由で、記載されていないケースが少なくありません。

苦情の処理に関する事項を派遣元管理台帳の記載事項とし、派遣労働者ごとに管理している趣旨は、派遣元事業主が派遣労働者の過去の苦情に応じた的確な対応を行うためのものですので、適切に記載するように心がけて下さい。

 

 

(3)労働者派遣個別契約書等との内容が一致していない

労働者派遣契約の更新や業務内容の変更があったにもかかわらず、派遣元管理台帳だけが古いままになっているケースが多くあります。

このような状態では、複数の書類間で整合性が取れず、行政調査でも指摘を受けるケースが多く見られます。契約の更新や変更があった場合は、必ずその都度、派遣元管理台帳の内容も見直すようにして下さい。

 

4.派遣元管理台帳の管理上のポイント

そもそも、派遣元管理台帳は、労働者派遣を行う際に必要な数多くある書類のうちの一つであり、単独で管理するものではありませんので、その他の関連する書類と内容が一致していることが重要です。

そこで、例えば、労働者派遣契約の更新を行った際には、

・労働者派遣個別契約書

・就業条件明示書

・派遣元管理台帳

これらをまとめて確認する仕組みを設けることで、更新もれを防止することができます。

また、教育訓練を実施した際や苦情対応を行った際にも、その都度記録することを社内ルールとして徹底することも大切です。そうすることで、後からまとめて記載する必要がなくなりますし、より正確な記載が可能になります。

派遣元管理台帳を含め法定帳簿は、「後で記憶を頼りに思い出して書く」ものではなく、「発生した時点で記録する」ことを徹底することが、適切な管理につながるものと考えます。

 

5.まとめ

派遣元管理台帳は、法律上作成する義務があるので作成する。また、定期指導等の行政調査の際に提出が求められるので適切に作成する。もちろんこれは正しいですし、今回のコラムでもそのような一面からの言及もしました。しかし、派遣元管理台帳の本来の役割はそこではありません。

派遣元管理台帳は、派遣労働者の就業状況や雇用管理の履歴を記録するものです。これを適切に作成・管理することで、派遣会社が適正な労務管理を行っていることを示す「業務の記録」となり、会社を守るための「証拠」ともなります。法的な作成義務、行政調査対策ととももに、そういった視点からも考えてみてはいかがでしょうか。

近年は、労働者派遣事業に求められるコンプライアンス水準も高まっています。行政調査への対応はもちろん、派遣労働者との信頼関係を構築するためにも、派遣元管理台帳の管理を日々の労務管理業務に組み込み、適切に作成・更新をしていくことが重要です。

今一度、実態に反映した台帳になっているかを確認する、そんなきっかけになれば幸いです。

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